第3話 「お言葉」
 あちこちに芸をしに行くと「またね」と言ってくれる子供達がいる。
…とは言っても、なかなか決まった場所や時間を約束してあげられない。
大道芸人の辛い所。
…でもそんな私と、また違う場所で、以前芸を見てくれたお客さんに
会えたとしたら…? それはすごい縁だと思う。
すごい確率だと思う。
先日、路上で風船ショップを開いていたら「以前大道芸を見たよ」と言う
お客さんが…。車椅子に乗った息子さんとお母さん。
衣装も着ていないのに、声をかけてくれたのだ。
何より覚えていてくれて、感激もひとしお。
風船はいつかしぼんでしまうけど、思い出は残るんだね。

 「この前、小柄な女性が大道芸をしているのを観て、楽しかったよ」
と仲間づてに聞く声もある。再会とは違うけど、これも嬉しいお言葉。

 「顔を覚えられる」という意味が解ってきた今日この頃。
誰かが毎日の生活の中に、私を持ち帰ってくれている…。
こんな幸せ、他ではなかなか味わえない。
だから大道芸はやめられない!
 芸人もお客さんの顔を結構覚えているものだ。
特に言葉を交わしたお客さんは印象深い。
「あの時、あの場所で」と声を掛けて頂くと、即座に思い出す。

 だから大道芸を観て下さる方に、ひとつお願いしたい。
大道芸人が「皆様のお気持ちをこの中へ」と帽子を差し出したら、
決して金品だけを欲しがっているのではないと、理解して欲しい。
「楽しかったよ」「またね」「頑張ってね」…そんな温かい言葉も、
私達にすれば立派な「形のあるお気持ち」なのだ。
そしてそれは、決して忘れられない出来事になる。

 また偶然に会える日を、お互いに楽しみにしたいものだ。
そして再会を互いに喜べたら、何倍も楽しい時間が、再び訪れる。

 またこの道の上で、お会いしましょう。

                         2002年6月27日発行


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